かみさまは、きのえだに とまっていた
ヤマドリに そっと いいました。
「いまも、せんそうで
たいへんな おもいを
している ひとが たくさん いるんだ。」
どうぶつたちは、すこし、
しんけんな かおになりました。
「せんそうって……こわいね……」
「せんそうが はじまるとね、
おうちを にげなきゃ いけなくなる。
がっこうにも いけなくなる。
ごはんも ふとんも なくなって、
まいにち いのちを まもるのに
せいいっぱいなんだ。」
カエルが ぽつりと いいました。
「こどもたちも?」
かみさまは、うなずきました。
「そう。こどもも、おとなも、
みんなが こわい おもいをしているんだ。
あさ おきて、
ふつうに あいさつして、
おひるごはんを たべて、
よる ふとんで ねる──
そんな ふつうの ことが、
できない ひとたちが、
たくさん いるんだよ。」
シカが、しずかに いいました。
「せんそうって、なんのために あるのかな……」
かみさまは いいました。
「むかしの けんかが つづいていたり、
じぶんたちだけが ただしいって、
おもいこんでしまったり……
いろんな りゆうがあるけれど、
ほんとうは、どの いのちも、
まもられるべきなんだ。」
そして、おそらと かみさまと
おはなしを するのが だいすきな こども、
コンに よびかけました。
「コンくん、どうおもう?」
コンは、そっと くさのうえに すわって、
ちいさな こえで いいました。
「ぼく……みんなで いっしょに、
ごはんをたべたり、あそんだり、
べんきょうしたり、したいだけなんだ。
けんかで こわれちゃうの、かなしい。」
かみさまは、そっと、
コンの かたに てを おきました。
「うん、その きもちを たいせつにね。」
そして、かみさまは
ソラに むかって いいました。
「──これで、わたしの なやみは
ぜんぶ はなしたよ。
もりのみんな、そして、
このほんを よんでくれた みんな。
どうしたら もっと
すてきな せかいに なると おもう?」
どうぶつたちは、しんけんに かんがえました。
そして、かみさまは、
やさしく にっこりと いいました。
「こたえは、わたしが きめるんじゃない。
みんなで いっしょに かんがえて、
すこしずつ つくっていくんだよ。」
──ソラは あおく たかく、
そのひも しずかに かがやいていました。