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第5話 女官を助けたい!

「マリーナ!」


よく通る低い声がした。


この声はシャルルダルク様…


「おはようございまする。

顔色も良さそうで、何よりでございます。


小青竜湯を処方するのも、あと1週間ほどで良いかと思われまする。」


「ショウセイ…?

あぁ、いつもの薬の事か…」


「御意。」


「昨日飲んだ果物水、アレにはどんな効果があるのだ?

少し、身体が軽いような気がする。」


「アレはデトックスの果物水でございます。」


「で、で、でとっくす?

そなたは変な言葉ばかりを使うな。」


「デトックス、つまり解毒や排毒の意味がございます。

体内には、毒素が溜まっておる場合がございますゆえ、それを果物と水の力で押し流し、排出するのでございます。」


「なるほど。

体内に毒素か…

そのような考え方を初めて知った。


この国では、その考え方は無いが…


マリーナ、そなたどこから来たのだ…?」


「隣国のセイント国から…」


私がそう言おうとした時、女官の悲鳴が上がった。


「誰かぁぁぁあ!

来てたもれ!


嘔吐風邪じゃ!」


私とシャルルダルク様は女官の元に駆けつける。


見ると、嘔吐して倒れる女官が居た。


「これは…!」


私が倒れた女官に触ろうとすると、「やめよ!触れると、嘔吐風邪が移るぞ!」とシャルルダルク様が私を引き寄せた。


「触らねば、診断できませぬ!」


と言ったが、すぐに医者達がやってきて、女官を隔離宮殿に連れていった。


「シャルルダルク様、あの女官はどうなるのですか?」


「嘔吐風邪ならば、中々は治らぬ。

それに、死に至る可能性もある。」


「私を離宮へ連れて行ってくださいませ!」


「ならぬ!」


「何故ですか!?

あの女官を救えるのは、私だけにございます!」


「ならぬ!

そなたは行かせぬ。」


かなり粘って頼み込んだが、シャルルダルク様は首を縦にふらなかった。



















私は仕方なく、その離宮に忍び込む事にした。


救える命をみすみす死なせる訳にはいかない。


私は、夜中皆が寝静まった頃、薬箱を持ち離宮に向かっていった。


「止まれ!

そこの女!

ここから先は通せんぞ!」


離宮の門番がいきりたつ。


「聞いておらぬのですか?

私は医者から薬を届けるように言われた娘でございます。」


「…怪しいな…

医者に確認する!」


と言われ、まずい、と思った所で…


「通してやれ…

俺が許可する…」


「シャルルダルク様…

なぜ、ここに…」


「そなたの事だ、どうせ、諦めずに来るだろう、とな。

はぁ…」


シャルルダルク様の呆れた顔を私は初めて見た。


そして、私たちは離宮に通された。


嘔吐風邪と言われ、運ばれた女官は眠っていた。


私は手足を触ってみる。





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