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第6話 女官の恩返し?

手足は冷たかった。


「シャルルダルク様。」


「何だ?」


「嘔吐風邪の症状を知っておりますか?」


「あ、あぁ。

高熱と関節痛、そして、酷い吐き気だ。」


「では、この女官は嘔吐風邪にございません。」


「…なぜ、そう言い切れる?」


「この女性の身体は全体的に、特に手足が冷えております。

熱も出ておりませぬ。」


私は寝ている女官の目を開いて粘膜の色を見る。

少し貧血気味か…?


「では、一体何の病なのだ?」


「恐らく…」


その時、女官が目を覚ました。


「貴方方は…!?」


「落ち着いてください。

医者の使いにございます。」


「医者の…?」


「今吐き気はしまするか?」


「少し…」


「その他に悪いところはありませぬか?

もしや、頭痛がするのでは?」


「なぜ、それを!?

そうです、ずっと朝から頭痛がしており…そのうち段々と気持ち悪くなって嘔吐したのです…」


「馬鹿な!

頭痛で吐き気などするものか!」


シャルルダルク様はおっしゃる。


「いいえ、ございますよ。

頭痛と一言で言っても様々な種類があるのでございます。

この女官はおそらく片頭痛というものにございます。


さぁ、この薬を。」


私は、呉茱萸湯という薬を飲ませた。


「あとは暗い部屋でゆっくりと眠るだけです。

明日の朝には治っていましょう。」


そうして、私とシャルルダルク様は離宮を後にした。



















「ヘンズツウとは何だ?

初めて聞いたぞ。」


「嘔吐を伴う頭痛にございます。

名前がついて無いだけで、女性の1割ほどは持っている病でございますれば、それほど珍しくはございませぬ。


ただ、あの女官はその病の中でも重い方でございますね。」


私は言った。


「ふむ…」


シャルルダルク様は、何事かを考えているようだ。


「どうしたのでございますか?」


「いいや、なんでもない。」

















そして、3日後。


「マリーナとやらは居らぬか?」


女官が私たち召使いの雑魚寝部屋にやってきた。


「はい。

私でございますが…」


「ダーニャ様がお呼びだ。

付いてまいれ。」


その女官は言う。


私がついて行くと、広い豪華な部屋に通された。


そこには、あの片頭痛の女官がベッドに腰掛けていた。


「私は4位の女官ダーニャです。

この度はそなたの薬で助かりました。


お礼に、何か一つ願いを聞いてあげようと思います。

何か申してみよ。」


4位?

よく分からなかったが、私はある事を願い出た。


「良いでしょう。

しかと聞き届けました。


2~3日待たれよ。」


ダーニャ様は血色の良い顔で微笑むと、私の願い出を聞く事を約束してくださった。


その願いとは…




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