それは…
薬部屋を作ってもらう事。
ダーニャ様はお約束通りに、使っていない狭い倉庫を私の薬部屋にと下さった。
しかし、元々が倉庫なので、裁縫箱や古いドレスや多少の宝石類、鎧や古本などなど、色々な物で溢れていた。
これを片付けるには、男手が要るが、後宮の男といえば…
私の頭にはシャルルダルク様が思い浮かぶ。
王子様が片付けなど手伝ってくれるはずも無いか…
私は諦めて、1人で片付け始めた。
いずれは、#薬箪笥__くすりたんす__#も欲しいが、今はそんな物を買うお金も無い。
そして、やはり問題が発生した。
大きな鎧を1人で持ち上げる事が不可能なのだ。
押しても引いてもビクともしない。
部屋の真ん中にあるものだから、薬部屋というよりは、鎧部屋である。
どうしようか?
と思っていた時。
「クックックッ…
それではまるで鎧の部屋ではないか。」
「シャルルダルク様!
わざわざ私を馬鹿にしに来たのですか?」
「そんな可愛くない事を言うと、手伝ってやらぬぞ?」
「手伝ってくださるのですか!?」
「そのつもりで来たのだが…
まぁ、そなたがお願いすればな。」
シャルルダルク様は妖艶に笑うとそう言った。
「お願いしまする…
手伝ってくださりませぬか…?」
「ふん…」
シャルルダルク様は軽々と鎧を外に出してくれた。
「ありがとうございまする!
これで、薬部屋に近づきましてございます!」
私は、床を掃き、雑巾がけする。
その間もシャルルダルク様は廊下に立って、私の様子を見ている。
「あのぅ…
もう手伝いは良いので…」
「俺にさっさと去れというのか?」
「はぁ…?
しかし、私に用事があるのですか?」
「無い。
用が無ければ居てはいけぬのか?
第3王子の俺を邪険にするのは、マリーナ、そなたぐらいよ。」
シャルルダルク様は急に不機嫌になった。
変な人だ…
結局シャルルダルク様は部屋が薬部屋らしくなるまで私を見ていた。
私は掃除して疲れたので、シャルルダルク様と別れ、召使いの雑魚寝部屋に戻った。
自由時間以外は雑魚寝部屋にいなくてはならない。
私としては日が暮れるまであの薬部屋で薬の調合をしたいのだが、そうもいかなかった。
薬箪笥…
この世界にも売ってるはずだが…
高くてとても手が出ないな…
はぁ…
そんな事を思いながら、床についた。
次の日、自由時間に薬部屋に行くと、ダーニャ様がいらっしゃっていた。
「ダーニャ様、おはようございまする。」
「マリーナ。
良き部屋になりましたね。」
ダーニャ様はにこやかに言う。
「はい、ダーニャ様のおかげでございます。
」