そうして、私は商人から1番安い薄黄色のドレスをを買った。
そして、次の次の日、ダーニャ様のお茶会が紫陽花の宮殿の広間で行われた。
熱い茶を入れたカップを召使いが運んで来る。
香ばしい香りだ。
これは…
黒豆茶か…
女官達が茶を楽しむ中、私はまずは自分のテーブルに置かれたお茶の香りを楽しもうと顔を近づける。
こ…れ…は…!?
黒豆の香りの中に毒草の香りが!?
「皆さま!
飲むのをおやめください!
コレは毒入りでございます!」
私はそう叫んだ。
ざわつく茶会。
「そんな馬鹿な事…
何を言ってらっしゃって…」
その時、1人の女官が席から落ち、倒れた。
「「「「キャァァァぁぁぁあ!!」」」」
突然のうちにパニックになり、女官達はうずくまる者、倒れるもの、指を突っ込み吐くもの、と地獄絵図のようになった。
私は、カップの匂いを嗅いで回った。
これは…!
「誰か、医者を呼んでまいれ!
茶に口をつけてはならぬ!!!」
ダーニャ様が言う。
そして、茶会の30人中、3人が意識混濁、2人が嘔吐、そして、4人が腹痛を訴えた。
そして、茶会は急遽中止になった。
どうしたものか…
私は薬部屋に戻り、解毒薬を調合しながら考えた。
「マリーナ!
無事か!?」
「シャルルダルク様…
どうしたのですか?
そのように慌てて…」
「何を呑気な…
茶会で毒事件があったそうではないか?」
「毒の匂いぐらいは嗅ぎ分けられまする。
私は大丈夫にございます。」
「そうか…
しかし、一体誰がこんな事を…
無差別に毒を入れるなどと…」
「この事件、無差別などではありませぬ。
犯人は小賢しく、狡い人間にございます。」
私は言う。
「しかし…
全員のカップに毒が入っていたのであろう?」
「恐らく今回の毒はキツネノボタンという毒草にございます。
口に入れると、嘔吐や下痢、腹痛、そして意識を混濁させる事もございまする。」
「ふむ。
やはり無差別ではないか。」
「いいえ、1人だけを狙った殺人事件にございます。
たしかに、お茶の大部分にはキツネノボタンという弱毒が盛られておりました。
しかし、1人だけ、トリカブトの毒が盛られたカップがありました。
トリカブトには匂いはありませんが、成分を調べたところ間違いはありませんでした。」
私は説明する。
「なるほど。
全員に弱毒を盛り、無差別と思わせた所で、1人だけに猛毒を盛った訳か。」
「おっしゃる通りでございます。」
「犯人は分かっておるのか?」
「私の予想に間違いがなければ…
犯人は…
5位の女官、ネレア様でございます。」
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本来のキツネノボタンには、匂いはありません。
異世界なので、匂いがある事にしています。