sideシャルルダルク
俺は自分の才能に自惚れていた。
いや、実際に才長け、剣の腕も、#政__まつりごと__#も、兄達に引けを取らなかったし、病弱で無ければ…と何度も思った。
だが、マリーナは薬学にあれだけ長けていながらも、自身の身分や扱いに不平不満を言わず、それどころか皆を助けるのに必死であった。
小柄な少女がどこにそんなパワーがあるか分からぬが、彼女はまた、聡明で賢かった。
そんな事を思いながら、俺は偽造した文を持って、ネレアの召使いアマンダの元を訪れた。
「シャルルダルク様…!」
「そなただな…
ダーニャの茶会で、毒を盛った犯人は…」
「な、な、何のことにございまするか…
私にはさっぱりで…」
「これを読むがいい。」
そこには…
『全てアマンダがやった事であり、私は関係ありません。
ネレア』
という文書があった。
「そ、そ、そんな…
ネレア様…!」
「このままそなたが黙っていれば、毒を盛った罪を1人で背負わなければならないのだぞ?
まぁ、死刑は免れまいな。」
俺は脅す。
「わ、わ、私は頼まれてやっただけなのです!!!
わ、わ、悪いのはネレア様ですわ!!!」
言ったな…
こうして、ネレアは後宮より追放され、アマンダは島流しとなった。
ネレアが首謀者だが、ネレアに対しての罰がアマンダよりも小さいのは…ラヒトの温情か…どうなのか?
それは、誰にもわからなかった…
俺は、その日も相変わらず薬部屋に入り浸っていた。
マリーナは薬を調合するのに目を輝かせ、俺のことなど、知らぬ、存ぜぬ、に近かった。
それでも、彼女の側に居る事は苦痛ではなかった。
彼女はヨモギをざるで洗って、あっという間に団子のような物を作り始めた。
「なんだ、その団子は?
ヨモギなど食べられるのか?」
「ヨモギはまさに万能の野草にございます。
そして、これは団子ではなく餅でございます。
さてと、これを魔法蒸し器に入れて…
あとは、待つのみでございます!」
「ふぅん、モチか…
そなたは俺の知らぬ言葉ばかりを使うな…
しかし、そんなに大量に作ってどうするのだ?」
「ダーニャ様に差し入れするのでございます。
ダーニャ様にお仕えする女官様も多いゆえ…
あ、出来上がったわ!」
マリーナは皿に入れて俺にヨモギモチを持ってきた。
「み、み、緑だぞ!
このモチとやら!」
「いいから食してみてくだされ!」
俺は恐る恐る食べた。
すると…
う、う、旨い!
なんと、美味な事か!
「コレは旨い!
あの雑草のヨモギがこうなるとは…」
「では、私ダーニャ様に持って行きますゆえ、薬部屋に鍵をかけておいてくだされ。」
そして、マリーナは去っていった。
そろそろ本気で口説いてみるか?
そんな考えが浮かんだ…