目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第12話 ヨモギ餅

ダーニャ様の部屋の前に向かうと、私はすぐに部屋に通された。


そこには、銀髪の見目麗しい姫君がいらっしゃった。


なぜ、姫君と分かったか?

それは、紫陽花のドレスを着ていた為だ。


紫陽花のドレスを着る事は、1位の姫君に限られているのだ。


「おぉ、マリーナか。

エリアス姫様、こちらが、優秀なる薬師のマリーナでございます。」


ダーニャ様が紹介する。


「そうですか。

はじめまして、エリアスと言います。」


「エリアス様、お初にお目にかかりまする。」


「ふふふ。

あのやんちゃな第3王子がそなたを気に入っているそうですね。」


エリアス様は優しげに微笑みながら、そう言った。


「恐れ多い事でございます。

シャルルダルク様は、薬師が珍しいだけでございましょう…」


私は申しあげる。


「なにやら、良い匂いがするな。

マリーナ、何を持っているのです?」


「ダーニャ様にお渡ししたいと…

ヨモギ餅でございます…」


「「ヨモギモチ???」」


エリアス様とダーニャ様は顔を見合わせる。


私は包みを開き、蓋を開ける。


「緑ですわね…」


「緑だな…」


「騙されたと思っておひとつ食べてみてくださいまし。」


ダーニャ様は恐る恐る食べた。


「おぉぉぉぉ!

こんなに美味しい団子ははじめまして食べたぞ!」


「"餅"でございますが…(・_・;」


「どれ、私にも一つ…」


エリアス様も食べる。


「なんと、美味しい!!!


私も女官達に持って帰りたいわ!」


「たくさんありますゆえ、今お分けしまする。」


皿に分けてそれぞれダーニャ様とエリアス様にお渡しした。

















数日後…


相変わらず、シャルルダルク様は私の薬部屋に入り浸っている。


そこへ、エリアス様がいらっしゃった。


「エリアス様、このような場所へ…」


「こんにちは、マリーナ、そして、シャルルダルク様。」


にこやかに言うエリアス様は今日もお美しい。


「どうしたのだ、エリアス?」


シャルルダルク様が尋ねる。


「えぇ…

実は…


あのヨモギモチをもらうまではマリーナ、あなたが優秀な薬師であると、疑っておりました。

しかし、あのヨモギモチを食べて以降、肌のツヤが良く、化粧のノリも大変良くなりました。」


「それは、よろしゅうございました。」


私は言う。


「そこで、あなたに頼みたい事があるのです…」


「「???」」


私とシャルルダルク様は顔を見合わせる。


「シャルルダルク様はご存知でしょうが、私には、第1王子バルサック様との間に娘がおりますのよ。」


「あぁ、ニーナ姫か。」


シャルルダルク様は相槌をうつ。


「ニーナ姫君がどうかなされたのですか?」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?