ダーニャ様の部屋の前に向かうと、私はすぐに部屋に通された。
そこには、銀髪の見目麗しい姫君がいらっしゃった。
なぜ、姫君と分かったか?
それは、紫陽花のドレスを着ていた為だ。
紫陽花のドレスを着る事は、1位の姫君に限られているのだ。
「おぉ、マリーナか。
エリアス姫様、こちらが、優秀なる薬師のマリーナでございます。」
ダーニャ様が紹介する。
「そうですか。
はじめまして、エリアスと言います。」
「エリアス様、お初にお目にかかりまする。」
「ふふふ。
あのやんちゃな第3王子がそなたを気に入っているそうですね。」
エリアス様は優しげに微笑みながら、そう言った。
「恐れ多い事でございます。
シャルルダルク様は、薬師が珍しいだけでございましょう…」
私は申しあげる。
「なにやら、良い匂いがするな。
マリーナ、何を持っているのです?」
「ダーニャ様にお渡ししたいと…
ヨモギ餅でございます…」
「「ヨモギモチ???」」
エリアス様とダーニャ様は顔を見合わせる。
私は包みを開き、蓋を開ける。
「緑ですわね…」
「緑だな…」
「騙されたと思っておひとつ食べてみてくださいまし。」
ダーニャ様は恐る恐る食べた。
「おぉぉぉぉ!
こんなに美味しい団子ははじめまして食べたぞ!」
「"餅"でございますが…(・_・;」
「どれ、私にも一つ…」
エリアス様も食べる。
「なんと、美味しい!!!
私も女官達に持って帰りたいわ!」
「たくさんありますゆえ、今お分けしまする。」
皿に分けてそれぞれダーニャ様とエリアス様にお渡しした。
数日後…
相変わらず、シャルルダルク様は私の薬部屋に入り浸っている。
そこへ、エリアス様がいらっしゃった。
「エリアス様、このような場所へ…」
「こんにちは、マリーナ、そして、シャルルダルク様。」
にこやかに言うエリアス様は今日もお美しい。
「どうしたのだ、エリアス?」
シャルルダルク様が尋ねる。
「えぇ…
実は…
あのヨモギモチをもらうまではマリーナ、あなたが優秀な薬師であると、疑っておりました。
しかし、あのヨモギモチを食べて以降、肌のツヤが良く、化粧のノリも大変良くなりました。」
「それは、よろしゅうございました。」
私は言う。
「そこで、あなたに頼みたい事があるのです…」
「「???」」
私とシャルルダルク様は顔を見合わせる。
「シャルルダルク様はご存知でしょうが、私には、第1王子バルサック様との間に娘がおりますのよ。」
「あぁ、ニーナ姫か。」
シャルルダルク様は相槌をうつ。
「ニーナ姫君がどうかなされたのですか?」