「えぇ…
それが、小さな頃から湿疹が身体に出来ていたのですが、それが最近では顔にも現れるようになって…
痒くて痒くて、あまり眠れもしない様なのです。
どの医者に見せても、湿疹用の軟膏を貰うだけで、一向に回復に向かわず…
お願いします。
ニーナをどうか、助けてやってください。」
エリアス様はおっしゃった。
「マリーナ、治せるのか?」
シャルルダルク様だ。
「湿疹と一言に言っても、色々な可能性が考えられまする。
一度ニーナ姫を診察させていただけませぬか?」
「えぇ、えぇ!
もちろんですわ!
では、私の部屋に参りましょう。」
シャルルダルク様と私はエリアス様に付いていく。
そして、渡り廊下を過ぎ、階段を上がり、エリアス様の部屋に着いた。
「お母様!」
絵本を放り投げて、女の子が駆け寄ってきた。
その子は顔が赤く、若干腫れている。
「ニーナ、お医者さまを連れてきたのよ。
あなたの湿疹もきっと治るわ。」
「はじめまして、ニーナ様。
マリーナと申しまする。」
にこっと笑って言う。
「嫌じゃ!
医者は嫌いじゃ!」
ニーナ姫は走って向こうの方へ行ってしまった。
「ニーナ、そんなわがままは…」
「私にお任せください。
エリアス様。」
私は袋から、くるみ饅頭を取り出した。
「ニーナ様、これは非常に美味しいお菓子でございます。
一つ食べてみませんぬか?」
「…お菓子…?」
ニーナ様は恐る恐るこちらにやってくる。
私はニーナ様にくるみ饅頭を渡した。
「美味しい!
もっと無いのか!?」
「私に肌を見せていただければ、もっと差し上げますよ。」
そんな訳で、診察が始まった。
ニーナ様には、赤い発疹が各所にあり、特に腕の関節や脚の関節、首などに多く見られた。
「コレは…
アトピー性皮膚炎でございます…」
「アトピーセイヒフエン???」
「アトピーとも呼ぶのですが、皮膚のバリア機能が低下して起きる湿疹の事でございます。
アトピーは皮膚の病気に思われがちですが、内臓などの身体の中の機能とも関わっております。
まぁ、難しい事はさておき…
ニーナ様の場合、赤みが強く、また痒みも強いとの事。
その場合には、コレが効きまする。」
私は白虎加人参湯を薬箱から取り出した。
「子供用に量を調節しております。
これを、朝、昼、晩の食事前に飲ませてみてくだされ。
少し、不味いですが、飲んだら褒美などを与えるとよろしいでしょう。
それから、ここで別の施術をしまする。
お湯を桶いっぱい沸かしてくだされ。」
私は言う。
そして、私は生姜のすりおろした物を木綿の袋に入れ、沸きはじめた湯に入れる。
その湯をタオルに染み込ませ固く絞り、患部に乗せていった。
そして、清潔なタオルで拭き取った。
「今日は風呂には入らぬように。
また、3日後に様子を見にきまするゆえ。」
そして、私とシャルルダルク様は薬部屋に戻った。