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第15話 やり過ぎか?

私は気が重かった。


いくら私が元貴族とは言え、今はただの奴隷身分だ。

それなのに…

第3王子のシャルルダルク様とデート…???


そんな事ができるはずもなく…


しかし、仕方ないので、一張羅の薄黄色のドレスに袖を通した。


「あら、マリーナ。

どこかに行くの?」


雑魚寝部屋の召使い仲間のシャイナが尋ねた。


「薬師として、女官に同行するのよ。」


私はもちろん嘘をつく。


「へぇー?

でも、まさか、その顔で行くんじゃ無いでしょうね?」


シャイナは私の顔をじっと見る。


「変か?」


「お化粧もせずに出かけるのは、その女官様に失礼に当たるわよ。」


化粧か…

そういえば、添加物を顔に塗るのが嫌で、転生前からあまりしたことが無いな…


「私がやってあげるわ!

それと…

髪も結いましょう!」


私はいいと断ろうとしたが、もうすでにシャイナは化粧水を私の肌にはたいている。


白粉を塗り、桃の紅を引き、嫌がる私のために、薄めに化粧してくれた。

さらに、髪も結いあげて、シャイナは仕上げに金の花のかんざしを差してくれた。


こんなに気合いを入れたら、引かれるのでは無かろうか…?


そうは思ったが、もう時間もないので、そのまま紫陽花の前に向かった。


シャルルダルク様は真っ白に金色の縁取りを施した洋服で、いつも下ろしている金髪はオールバック気味にセットしている。

鮮やかなミッドナイトブルーの瞳と白の洋服はとても似合っていた。


私はドレスを僅かに持ち上げ、「お待たせしました」と礼をする。


「おぉ、やっ…」


シャルルダルク様は、しかし、言葉を失ったように私を見つめた。


「へ、へ、変でございますか!?」


やはり、化粧やら髪結いやら、やり過ぎたのだろうか?


「いや。

今日のそなたは、紫陽花よりも美しい。」


シャルルダルク様は私の手を取りキスを落とした。


「あ、ありがとうございまする…」


私は少し横を向いて、照れ隠ししながらそう答えた。


シャルルダルク様は、私を馬車までエスコートし、王族専用の豪華な馬車に乗った。


「今日はどこに行かれるのですか?」


「王都にて、花祭りがあっておる。

行ってみぬか?」


「それは…良いですね!」


花祭り…か…

ベルゼ様ともよく祭りに行っていたな…


一体私の何が悪かったのだろうか?


ベルゼ様はリリアに走った。


やはり、私に女としての魅力が無かった…?


「…リーナ。

マリーナ、聞いておるのか?」


「あ、はい!

すいませぬ、ちょっとぼーっとしておりました!」


「?

もうすぐ着くぞ。」


そして、王都の花祭りのメインロードに着いた。









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