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第17話 召使いに求愛するか?

帰りの馬車の中、私は考えていた。


シャルルダルク様が買ってくださったかんざしには、どのような意味があるのかと…


チューリップ。

特にピンクや赤は、『愛の告白』という花言葉で知られている。


しかし、目の前のこの美青年が私に好意を抱くはずは…

それに…

花言葉の意味すら知らないであろう…


全ては私の勘違いと言うわけだ。

なんだ…


今の私は奴隷であり、召使いなのだ、何処の王子が奴隷に求愛しようか?

少し考えれば、わかることだ。


後宮に着き、私はシャルルダルク様にお礼を言って、召使いの雑魚寝部屋に帰っていった。


帰ると、召使い達を取り締まる女官が私に言った。


「お前は、召使い・中に格上げされました。

ついておいで。

新しい部屋に案内しましょう。」


え、召使い・中だと?


私が不思議に思いながら、着いていくと、3人部屋に通された。

雑魚寝部屋とは違い、ベッドが3つあり、簡素だが机と椅子もそれぞれ3つある。


「同室は、セリーヌとフィーネだ。

仲良くやるのだぞ。」


そして、女官は去っていった。


「あなたぁ、新入りねぇ?」


召使いにしては、派手な美人がそう言った。

化粧を薄くしているのか…

色白さが目立つ美人だった。


「マリーナと申します。

よろしくお願い申し上げます。」


丁寧に挨拶すると、彼女は言った。


「私はセリーヌよ。

だけどぉ、変ねぇ。」


「変、とは…?」


「普通はどんなに勤勉に働いていても、召使い・下から中に上がるのは、一年ほどはかかるのよ。

でも、あなた、まだ入って3ヶ月目ですってぇ?」


「…恵まれました。」


私は薬の事はいわずに、そう言った。


「まぁ、いいわ…

私はあなたの事まだ認めて居ないからぁ。

あなたのベッドはそっちのよ。

迷惑かけないでね。」


そして、セリーヌは鏡台に向かって化粧直しをし始めた。


ふぅ…

どうやら、歓迎されて居ないようだ。


もう1人のフィーネはどうなのだろうか?


しばらくすると、フィーネが帰ってきた。


ボブカットの小動物系の可愛らしい少女だった。


「あー。

新入りさんだー!

私フィーネ。

よろしくねぇー!」


「よろしくお願いしまする。

マリーナでございます。」


こちらのフィーネとはなんとか上手くやれそうだ。


そうして、私の召使い・中としての毎日が始まろうとしていた。


召使い・中と下では、主に役割が違ってくる。

下は、掃除や洗濯物などの雑用。

中は、主に料理や裁縫などの雑用。

上は、女官の世話全般。


である。


なお、上でも、中でも、下でも、仕事が終われば自由時間となり、本を読んだり、字を書いたりと、割と何でもできた。


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