その日も裁縫の仕事を終わらせて、薬部屋に行くと、シャルルダルク様とエアリス様そして、ニーナ様がすでにおり、何やら楽しそうに話していた。
「おぉ、マリーナ。
そなたの話をしていたところよ。」
「悪口でございますか?」
「ふふふっ。
とんでもないわ。
あなたにお礼が言いたくて来たのよ。
見て頂戴、ニーナの湿疹が治っているわ。」
エアリス様がおっしゃる。
「ニーナ様。
すこーし、腕を見せてくださりませぬか?」
「うんっ!」
ニーナ様の腕を見ると、確かに赤い湿疹は無くなっていた。
「確かに赤い湿疹は無くなっておりますが、やはりニーナ様の肌はカサつきと僅かな湿疹が見受けられまする。
少々お待ちくだされ。」
私は温清飲と薏苡仁を子供用に調整し、紙包に入れる。
そして、白胡麻油とヨモギを土鍋に入れ、エアリス様やシャルルダルク様が歓談している間に30分ほど煮た。
そして、小瓶にヨモギオイルを入れ、温清飲、薏苡仁の薬と一緒にエアリス様にお渡しした。
「この小瓶に入ったものは…
一体?」
「ヨモギオイルという物にございまする。
ヨモギと白胡麻油で絞り出したものゆえ、体に害はございません。
風呂上がりに乾燥の気になる部分に塗ってくだされ。
比較的湿疹も落ち着いているので、薬も変えておきましてございまする。」
私は説明する。
「ありがとう、マリーナ。
全てそなたのおかげです。
召使い・上にしてあげたかったのですが、いきなりは無理だと言われて…
力不足でごめんなさいね?」
エアリス様のお口添えだったのか…
「いえ、雑魚寝部屋からの3人部屋は極楽にございますれば…
ありがとうございまする。」
「今度、紫陽花の会を私が主催しますのよ。
ぜひ、マリーナ、あなたをお招きしたいわ。」
「召使いの私が出ては…」
「構いませんわよ。
大人数ですもの。
誰が召使いなどと覚えておりませんわ。」
そして、エアリス様はニーナ様を連れて去っていった。
「紫陽花の会か…
久しぶりに俺も出るか…」
シャルルダルク様がおっしゃる。
「いつもは出ないのでございますか?」
「あぁ、媚を売る女どもがうるさいのでな。
後宮の行事には極力関わらないことにしておる。」
なるほど。
モテまくりなわけか。
チューリップに意味など無かったようだ。
「おい、マリーナ!」
「なんでございまするか?
この狭い部屋でそんな大きな声を出さずとも、聞こえております。」
「俺の…気持…」
その時。
「兄上…
ここにおったのですか…」
金髪にアイスグリーンの瞳の美青年が現れ、そう言った。