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第18話 チューリップに意味はない

その日も裁縫の仕事を終わらせて、薬部屋に行くと、シャルルダルク様とエアリス様そして、ニーナ様がすでにおり、何やら楽しそうに話していた。


「おぉ、マリーナ。

そなたの話をしていたところよ。」


「悪口でございますか?」


「ふふふっ。

とんでもないわ。

あなたにお礼が言いたくて来たのよ。

見て頂戴、ニーナの湿疹が治っているわ。」


エアリス様がおっしゃる。


「ニーナ様。

すこーし、腕を見せてくださりませぬか?」


「うんっ!」


ニーナ様の腕を見ると、確かに赤い湿疹は無くなっていた。


「確かに赤い湿疹は無くなっておりますが、やはりニーナ様の肌はカサつきと僅かな湿疹が見受けられまする。


少々お待ちくだされ。」


私は温清飲と薏苡仁を子供用に調整し、紙包に入れる。


そして、白胡麻油とヨモギを土鍋に入れ、エアリス様やシャルルダルク様が歓談している間に30分ほど煮た。


そして、小瓶にヨモギオイルを入れ、温清飲、薏苡仁の薬と一緒にエアリス様にお渡しした。


「この小瓶に入ったものは…

一体?」


「ヨモギオイルという物にございまする。

ヨモギと白胡麻油で絞り出したものゆえ、体に害はございません。

風呂上がりに乾燥の気になる部分に塗ってくだされ。

比較的湿疹も落ち着いているので、薬も変えておきましてございまする。」


私は説明する。


「ありがとう、マリーナ。

全てそなたのおかげです。


召使い・上にしてあげたかったのですが、いきなりは無理だと言われて…

力不足でごめんなさいね?」


エアリス様のお口添えだったのか…


「いえ、雑魚寝部屋からの3人部屋は極楽にございますれば…

ありがとうございまする。」


「今度、紫陽花の会を私が主催しますのよ。

ぜひ、マリーナ、あなたをお招きしたいわ。」


「召使いの私が出ては…」


「構いませんわよ。

大人数ですもの。

誰が召使いなどと覚えておりませんわ。」


そして、エアリス様はニーナ様を連れて去っていった。


「紫陽花の会か…

久しぶりに俺も出るか…」


シャルルダルク様がおっしゃる。


「いつもは出ないのでございますか?」


「あぁ、媚を売る女どもがうるさいのでな。

後宮の行事には極力関わらないことにしておる。」


なるほど。

モテまくりなわけか。


チューリップに意味など無かったようだ。


「おい、マリーナ!」


「なんでございまするか?

この狭い部屋でそんな大きな声を出さずとも、聞こえております。」


「俺の…気持…」


その時。


「兄上…

ここにおったのですか…」


金髪にアイスグリーンの瞳の美青年が現れ、そう言った。



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