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第19話 皇貴妃の診察

「レガット…

どうしたのだ?」


「え、えぇ、それが…

母上の容体が悪いようなのです…」


レガットと呼ばれた青年は言う。


「なんだと?

3日前に医者に見せた時は大事無いと言っておったでは無いか!」


シャルルダルク様がおっしゃる。


「そうですが…

母上の意識は混濁しております…

ベッドからも起き上がれぬ状況です。


兄上、オレと一緒に来てください。」


「分かった…」


そうして、シャルルダルク様は行ってしまわれた。


















次の日、相変わらず薬部屋で薬の調合をしていると…


レガット様がやってきた。


フィーネからの情報によると、レガット様はこの国の第4王子である。

農産物の取り締まりを主にやっておられるとか。


「レガット様。

どうしてこのような場所に…?」


「兄上がそなたを連れてこいと言うのでな。」


「連れてこい…?

まさか…」


「そう、母上の元にだ。

聞けばそなたは優秀なる薬師とな。

母上の病を治せるのはそなたしかおらぬ、と兄上が言っておるのだ。


だが、オレ達の母上は皇貴妃だ。

無礼は決して許されぬ。


見たこと、聞いたことも漏らしてはならぬ。


いいな?」


私は薬箱を持ってこくりと頷いた。


後宮の上の階の皇貴妃様の部屋に向かっていった。


「先に…

どのような症状かお聞きしても?」


「母上は前から貧血が酷かったのだ。

そして、昨日、貧血により倒れ、今は意識が無い。

それから、数日前から右手が動かぬと言っておった。」


レガット様は説明する。


「分かりました。

後は診察してみますゆえ。」


そして、皇貴妃様の部屋に着いた。


広い室内に、天使の彫刻や女神の置物が飾られている。


皇貴妃様は広いベッドで眠っていた。

いや、意識が無いのか。


シャルルダルク様は、ベッドの傍の椅子に腰掛け、心配そうな面持ちで皇貴妃様を見ている。


「兄上、マリーナを連れて参りました。」


「マリーナ…

すまぬ。

そなたしか頼れる薬師はおらぬのだ。


どうか、母を…」


シャルルダルク様は言う。


「診察しますゆえ、少し離れてくだされ。」


私は皇貴妃様の目を開く。

なるほど、確かに貧血だな。

目の粘膜には、赤みがなく、白に近い。


しかし、原因が分からぬ…


鉄分で治るようには見えない。


その時、皇貴妃様の化粧の白粉が手に付いた。

この手触りは…!?


「皇貴妃様の化粧をしている者は誰でございますか?」


私は言う。


「私ですが…

何か…?」


女官の1人がめんどくさそうに申し出た。


「これからは、化粧をお辞めください。」


「な、な、何を言うておる!

この方は皇貴妃様なるぞ!


化粧をせぬなど…!


皇貴妃様を笑物にする気か!?」











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