「レガット…
どうしたのだ?」
「え、えぇ、それが…
母上の容体が悪いようなのです…」
レガットと呼ばれた青年は言う。
「なんだと?
3日前に医者に見せた時は大事無いと言っておったでは無いか!」
シャルルダルク様がおっしゃる。
「そうですが…
母上の意識は混濁しております…
ベッドからも起き上がれぬ状況です。
兄上、オレと一緒に来てください。」
「分かった…」
そうして、シャルルダルク様は行ってしまわれた。
次の日、相変わらず薬部屋で薬の調合をしていると…
レガット様がやってきた。
フィーネからの情報によると、レガット様はこの国の第4王子である。
農産物の取り締まりを主にやっておられるとか。
「レガット様。
どうしてこのような場所に…?」
「兄上がそなたを連れてこいと言うのでな。」
「連れてこい…?
まさか…」
「そう、母上の元にだ。
聞けばそなたは優秀なる薬師とな。
母上の病を治せるのはそなたしかおらぬ、と兄上が言っておるのだ。
だが、オレ達の母上は皇貴妃だ。
無礼は決して許されぬ。
見たこと、聞いたことも漏らしてはならぬ。
いいな?」
私は薬箱を持ってこくりと頷いた。
後宮の上の階の皇貴妃様の部屋に向かっていった。
「先に…
どのような症状かお聞きしても?」
「母上は前から貧血が酷かったのだ。
そして、昨日、貧血により倒れ、今は意識が無い。
それから、数日前から右手が動かぬと言っておった。」
レガット様は説明する。
「分かりました。
後は診察してみますゆえ。」
そして、皇貴妃様の部屋に着いた。
広い室内に、天使の彫刻や女神の置物が飾られている。
皇貴妃様は広いベッドで眠っていた。
いや、意識が無いのか。
シャルルダルク様は、ベッドの傍の椅子に腰掛け、心配そうな面持ちで皇貴妃様を見ている。
「兄上、マリーナを連れて参りました。」
「マリーナ…
すまぬ。
そなたしか頼れる薬師はおらぬのだ。
どうか、母を…」
シャルルダルク様は言う。
「診察しますゆえ、少し離れてくだされ。」
私は皇貴妃様の目を開く。
なるほど、確かに貧血だな。
目の粘膜には、赤みがなく、白に近い。
しかし、原因が分からぬ…
鉄分で治るようには見えない。
その時、皇貴妃様の化粧の白粉が手に付いた。
この手触りは…!?
「皇貴妃様の化粧をしている者は誰でございますか?」
私は言う。
「私ですが…
何か…?」
女官の1人がめんどくさそうに申し出た。
「これからは、化粧をお辞めください。」
「な、な、何を言うておる!
この方は皇貴妃様なるぞ!
化粧をせぬなど…!
皇貴妃様を笑物にする気か!?」