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第22話 図星

sideシャルルダルク


マリーナはその日も髪を雑に結いあげて、袖をまくって調合に必死だった。


俺はそんな彼女を見るのも、また、好きだった。


「あ、そう言えば先程レガット様がお見えになりました。」


マリーナが何でもない話をふるように俺に言った。


「レガットが?

なぜだ?」


「母上様のお礼を言いにきた、と。

それで、お礼にオペラに行かぬか?と。」


それを聞いた瞬間、俺は頭に血が昇るようだった。


レガットは俺の気に入った女に昔からちょっかいかける癖があった。


気に入ったといっても、一時のお遊びだったので、放っておいたが…


マリーナにまで手を出す気か!?


「どうされたのですか…?」


マリーナは不思議そうに俺の顔を見る。


「して、そなた何と答えたのだ?」


つい、問い詰めるような口調になってしまう。


「え、えぇ…

一度はお断りしましたが、向こうも引けぬようだったので…」


「受けたのか…?


よい、俺が断ってやる。」


「えぇ!?

そんな失礼な事はできませぬ!」


「うるさい!

ホイホイ男に付いて行くのか!?

尻軽め!」


「はぁぁぁ!?

私が尻軽なら、シャルルダルク様とてプレイボーイでございましょう!」


「なんだと!?

俺がいつお前を口説いた!?


プレイボーイならば、もうとっくに抱いておるわ!」


「何という軽い発言でございますか!?

それに、レガット様に下心はございません!」


「なぜ、分かるのだ!?

心を読む薬草でも煎じて飲んだか!?」


俺たちは、かなり言い合いになり、結局ケンカ別れした。


俺はメイス城に帰り、すぐにレガットを呼び出した。

















「お呼びでございますか?兄上?」


にやけた顔でレガットが現れた。


「単刀直入に言う。

マリーナをオペラにはやらぬ。」


「それは、マリーナが断ったのですか…?」


「…そうだ。」


「嘘はいけませんね。

マリーナは嫌がる素振りは見せませんでしたよ。

オペラには連れて行きます。」


「なぜ、マリーナにちょっかい出す?」


「母上の礼でございますれば、ちょっかいなどと…


兄上の正式な恋人であれば、身を引きますが…

そのような関係では無さそうですので…


マリーナがオレとオペラに行こうと何しようと、勝手かと存じます。」


「…俺を怒らせた事、後悔するなよ?」


「なぜ、怒るのか分かりませんね。

マリーナを好きなのですか?


どうせ、それも伝えてはいないのでしょう?


好きにさせていただきます。」


図星を言われて、俺は言い返すことが出来なかった。


そうだ、チューリップのかんざしを渡しただけで、好きだ、などとは言えなかった。


レガットは一礼して去っていった。






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