言葉の重さ。まさに、まさしく『言葉の重さ』が描かれています。
ふだん私も使うし、なにかとよく耳にする言葉ですし、ニュースや解説あるいはSNSでも見かける表現だと思うわけですよ、『言葉の重さ』って。それが実際に重量として確認できる世界。可視化する秤。
この物語を読んでいるとき、どこかSF的だなと思いました。少し不思議。未来的にも思えますが、すでに歴史があるものなのだと読みすすめているとわかってきて、時空を越えていく感触がありました。なによりも人類普遍の愛のテーマと重なります。
さらりと読めて、それは軽やかな読書体験でありながら、読後感のずしりとした感触といったらもう。
私の感想を言葉秤師に測ってもらいたいほどです。
いちばん胸に迫ったのは、「軽くていい、まずは現実/現在状況を知ること、知った上でこれからどうしたいのか、どんなふうに育てていきたいのか」というメッセージです。
言葉の重さを意識したことがない人は、いないのではないでしょうか。言葉の重さに傷つき、あるいは不安や心配を抱えたり、迷ったり悩んだりという経験は尽きないからです。それを明確に、『言葉に重さがある世界で』と描ききった著者・菊池まりなさんに脱帽です。
失望することがある、でも、その失望と真正面から向き合ったことで希望に結びつけられる。正反対のものが、ちゃんと同じ地平で並んでいられて、なおかつ「愛し合える」と提示されているのがまた素晴らしく感じられます。
秀明と美咲のエピソードは、愛の軽さをも肯定するがゆえに、人の成長を信じる力強さがあります。で、あらためてこのタイトルです、
言葉の重さ
素晴らしく感嘆。ふるえてます。
作品を読み終えたというのに、私の中で誰かと誰かの言葉の重さが動き始めているかのようです。
願わくば、誰かの言葉の軽さが、誰かと共有できる重さへと変化していくエピソードにまた触れたいと思います。完結済とありますが、ここからのスタートとなっている気もしますので。
言葉その重さを測定できない私たちは、できないからこそ正直に感じて、そのときの自分たちと誠実に向きあい、時間をかけながら成長させて生きていける。
もしも将来、自分や誰かの言葉の重さに失望してしまうことがあったとしても、この作品が松明のように道を照らしてくれることでしょう。出会えてよかった。メルシィボク!