癖のある人物しか登場しないのに、何故か統率の取れた場所、そんな冒険者ギルド『探究者の灯(シーカーライト)』が舞台。
ギルド受付嬢物を普段あまり読まないのですが、受付嬢と冒険者との恋や駆け引き、支える側の矜恃などが描かれるケースが多いと思うのです。
トリフローラは一味も二味も様子が違います。冒険者たちよりも遥かに曲者揃いな3人の魅力的な受付嬢たちがいるのです。
元は一級冒険者のリコリス。義体化していても勘の鋭さと芯のぶれなさは未だ一級。
名前からして気になる『閉じられた図書館』という特殊技能持ちの冷静沈着なブルーベル。
二人の影でにこにこ微笑んでいるだけのようで、実はいちばんの曲者、見えてしまうエピフィラ。
そしてそんなフローラたちを束ねるギルド長のイエバ。適当でやる気がなくて女遊びだけ盛んな表の顔と、冷徹な状況判断、政治力を併せ持つ策士の顔を持つイケおじ。
こんな魅力あるキャラクターの出てくる物語が面白くないわけがありません。とある事件をきっかけに物語は進みますが、設定も盛り沢山で、まだまだ未知のお宝があちこちに埋まっているのです。
おそらくこの短編は、ある1シーンを切り取っただけで、本来長編作品だと思います。でなければ勿体ない。あまりにも魅力的な設定が暴力的なまでに詰め込まれているのですから。
個人的にはブルーベルとイエバの師弟関係編が特に読みたいですが、同じくらいリコリス無双時代も、エピフィラの笑顔の裏話も、無名の冒険者になってギルドの隅から覗き見たい気持ちでいっぱいでした。
またいずれ、続きの世界に会えることを願っています。