あなたへ、名を呼ぶかわりに
完結済最近更新:エピローグ 灯の残る場所で2025年05月22日 18:20
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あらすじ
詳細
母の死後、焼け残った一通の手紙を見つけた少年・藍。 それは、語られなかった家族の記憶の扉をそっと開ける鍵だった。 藍は文化部の名目で、旧図書館の廃棄資料から“手紙の真実”を追い始める。 協力を申し出たのは、朗読を言葉より先に感じ取る少女、マカロンで感情を和らげる少年、 記録にこだわる冷静な生徒会長、そして“見えない声”に敏感な同級生たちだった。 やがて彼は、母・瑞穂が残した日記、そしてその母――絹代の存在と向き合うことになる。 声にならなかった叫び、記録されなかった想い。 朗読劇を通して“語られなかった者たち”を舞台に呼び寄せた藍は、 それが他人のための行為ではなく、自分自身の“名を呼ぶ行為”だったと気づいていく。 誰かを記録するのではなく、 自分の声を、自分のために灯すこと。閉じる
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創意工夫ありし者創意工夫ありし者2025-05-22 18:20ネオ・デビューネオ・デビュー2025-05-09 17:37作者のひとりごと作者のひとりごと
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トパーズの指輪と、冷蔵庫の付箋
トパーズの指輪と、冷蔵庫の付箋  結羽は、頼まれると反射的に「大丈夫です」と言ってしまい、職場で雑用と尻ぬぐいを抱え込む毎日。理不尽な責任転嫁が起きても、資料室に逃げて笑ってやり過ごしてきた。指先で祖母の形見のトパーズの指輪をなぞると、胸の奥のざわつきだけが少し静かになる。   ある夜、上階の水漏れで部屋が使えなくなり、段ボールを抱えて廊下で立ち尽くす結羽を、同僚の悠都が自室へ招く。「修繕が終わるまで」と始まった同居生活は、冷蔵庫の棚を半分に分け、付箋でルールが増えていく。洗剤の置き場、音の出る時間、鍋の取っ手の向きまで。几帳面すぎる一言に思わず笑い、夜食のうどんをすすりながら、結羽は“断る練習”を小さく積み重ねる。悠都は小さな助けにも「ありがとう」を言い、結羽が自分で決める瞬間だけ、黙って背中を支える。   しかし会社では、上司がミスを隠すために結羽名義で報告を出し、取引先への謝罪まで丸投げする。結羽が「優しくしてください」と曖昧に頼るほど、相手はその曖昧さに乗ってくる。そこへ新人の慎が「なんで結羽さんが謝るんですか?」と悪気なく質問を連射し、空気が変わる。佳浩はメールの時刻・宛先・添付を淡々と確認し、由梨乃は議事録と段取りで味方を増やす。結羽は、泣きながらでも言い切る——「勝手に名義を使わないでください」「担当範囲を明確にしてください」。   謝るべき点は謝り、押し付けられた部分は否定する。人事への相談、取引先への説明、そして同居の終わりが近づくころ、結羽は指輪に頼らず呼吸できる自分に気づく。最後に結羽は会議室で、自分の声で告げる。恋も仕事も、逃げるためではなく守るために選ぶ——私の幸せは私が決める。   引っ越し当日、冷蔵庫の前で悠都が最後の付箋を貼る。「半分ずつ」は、別れの合図じゃない。結羽はその紙片を指で押さえ、うなずく。次は“頼まれたから”ではなく、“私が望むから”。
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